トランプ氏、過去にマフィア関係者との取引も


 米共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は若くて野心的だった1981年、マフィアが横行する米ニュージャージー州アトランティックシティーのカジノ業界への参入をもくろみ、連邦当局者と話し合いの場を持った。

 トランプ氏はニューヨークでの従来型の不動産開発を通して一家が築き上げた名声を傷つける恐れがあることを認識しており、アトランティックシティーの取引先に評判の悪い人物との付き合いがある可能性も理解していた。トランプ氏との協議についてまとめた米連邦捜査局(FBI)のメモによると、参加したFBI職員は同氏に対し、他にもっと簡単な投資方法があると助言した。

 だがトランプ氏はそのまま計画を実行し、アトランティックシティーにカジノリゾートを建設した。最終的には、4つのカジノを所有するまでになった。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がトランプ氏の経歴について検証したところ、同氏はアトランティックシティーとニューヨークの不動産開発において、時として犯罪組織とつながりがある人々と取引を行ったことが明らかになった。

 例えば、警察がフィラデルフィアのマフィア関係者と呼ぶ人物、税金詐欺で起訴されニューヨークの競馬場立ち入りを禁じられた人物、恐喝で有罪判決を受けた労働組合幹部、複数のマフィア関係者が関与した株価操作で有罪となった不動産開発業者などがその中に含まれる。

 こうしたつながりは、一例を除いて過去の話だ。だが米大統領選が大詰めを迎える中、トランプ氏は頻繁にビジネスでの成功を自らの大統領としての適格性の1つに挙げている。過去の取引関係は、同氏の経歴を彩るものだ。

当時は関係性を認識していなかった

 トランプ氏はインタビューで、犯罪組織に関与していたかもしれない人々と取引したこともあると認めたが、浅い付き合いでしかなかったか、当時は関係性を認識していなかったと主張した。

 「みなが私のようであれば、モブ(マフィア)は存在しない。私はそうした駆け引きはしない」と述べ、自らが「最も潔白な人間」であると主張した。

 30~40年前、特にアトランティックシティーやニューヨークで事業を展開していた建設、不動産、ギャンブル業界の多くの人々がそうであったように、トランプ氏も素性の怪しい人物との取引を行うか否かの決断を迫られることが時折あった。

 業界関係者は、建設作業員が所属する労働組合や資材の運搬を犯罪組織が支配していた当時、こうしたやり取りは避けられなかったと指摘する。犯罪組織はカジノ業界でも大手を振るっていたが、必ずしも不動産開発業者が積極的に関係を構築しようとしたのではなく、業者自体がギャングの一員だったわけでもないという。

 トランプ氏や他の不動産開発業者との取引があったマフィア関係の労働組合幹部を父に持つマイケル・コディ氏は、トランプ氏は「こうした関係を持たずにトランプ・タワーを建設することはできなかっただろう。ニューヨークのすべての不動産開発業者が当時はそうしなければならなかった」と話した。

 ゼネコン(総合建設会社)との取引を通してマフィア関係者と直接関わることを避けた不動産開発業者もいた。だがトランプ氏は、より多くの利益を得ることができるため、ビジネスに関する交渉は自分で進めたいと思っていたと語った。

 2000年代にトランプ氏はマフィアと関係のあった人物と取引をした。トランプ・タワーにテナントとして入居してきたベイロック・グループという名の小さな不動産業者が、ビジネス交渉を持ちかけてきたときだ。ベイロックはトランプ氏のオフィスの階下にある2フロアを借りると、同社が手掛ける建物の持ち分と引き換えにトランプ氏の名を建物に冠するという話を持ちかけてきた。その中の一人がフェリックス・セイター氏だった。

 2人が知り合うはるか以前の90年代初頭、ロシア生まれのセイター氏は株式ブローカーだった。だが、バーでけんか騒ぎを起こし、相手男性の顔をマルガリータのグラスで突いた暴行でブローカー免許を失い、刑務所に入った。

 90年代後半、セイター氏はマフィア絡みの仕手戦に関与していた。信用銘柄の値をつり上げ、何も知らない投資家に投げ売るという手口で、そこから稼いだ利益は海外に隠した。司法省の発表文書によると、この手口には3つのマフィア組織が絡んでいた。

ドナルド・トランプのシニアアドバイザー

 セイター氏は罪を認めたが、政府や検察当局などに協力したため、有罪判決は「封印」された。セイター氏がベイロックに入ったのはこの頃(2000年前後)で、トランプ氏とも不動産開発で時折、取引をしていた。

 ベイロックが手掛けたプロジェクトにはニューヨークのホテル「トランプ・ソーホー」やフロリダ州フォートローダーデールの「トランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワー」が含まれる。

 米紙ニューヨーク・タイムズは2007年にセイター氏の犯罪歴について報じた。トランプ氏は報道から数日後に証言録取を受け、セイター氏の犯罪歴については報道があるまで知らなかったと話した。

 2009年の公判で、セイター氏はすでに廃業しているベイロックの不動産ビジネスを「自分の両手で築いた」と表現しているが、恐らくセイター氏は同社のナンバー2だったとみられている。セイター氏はインタビューの中で、マフィア絡みの仕手戦に関しては、国の安全で政府に協力することで罪を償ったと主張。トランプ氏に関する質問には答えなかった。

不動産会社トランプ・オーガニゼーションの法務を担当するアラン・ガルテン氏は、取引相手の企業やその所有者については調査するものの、従業員までは調査しないと話す。セイター氏が関与した違法行為の有罪判決が封印されていた以上、「『それを知っていたはずだ』と言うのは」不当だと述べた。

 トランプ氏がセイター氏の犯罪歴を知ってから、しばらく経った後の2010年にトランプ・オーガニゼーションはセイター氏を無給のコンサルタントとして迎え入れた。名刺には「ドナルド・トランプのシニアアドバイザー」と印刷されていた。

 トランプ氏はインタビューの中で、「(セイター氏には)良い案件があるなら持ってこいと言った。彼は実際、2つの案件を持ち込んだが、どれも気に入らなかった」と述べた。

 セイター氏は柔和で温厚に見え、マフィアとのつながりがあるようには見えなかったとトランプ氏は話す。マフィアと取引するのは「私のやり方ではない」とも言った。

 トランプ氏は「そういう関係を持てば、結局は負けることになる。目先の問題を解決することはできるが、長期的には悲惨なことになる」と語った。

<転載元:WSJ>
トランプ氏、過去にマフィア関係者との取引も

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